【弁護士解説】メーカー(製造業)への転職で「失敗」しないために。よくある法的トラブル3選と回避チェックリスト

【弁護士解説】メーカー(製造業)への転職で「失敗」しないために。よくある法的トラブル3選と回避チェックリスト。のアイキャッチイラスト。左側には法的トラブルに悩み、絡まった糸や契約書のバツ印に囲まれた男性が描かれ、中央では自信に満ちた弁護士が「回避チェックリスト」を提示している。右側には、そのリストを手に明るい表情で工場へと続く成功の道を歩む男性が描かれており、転職の失敗と成功を対比させた図となっている。 業種別トラブル集
弁護士町田北斗

2018年登録・東京弁護士会所属
個々人が業種や職種毎のトラブルを予測回避するのは極めて困難です。
本サイトでは、過去に発生したトラブル事例を分析して回避することで、失敗しない企業・エージェントを選び抜き、安全なキャリア形成を支援します。

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日本の基幹産業「メーカー」に潜むリスク

日本の産業を支える「モノづくり」。食品、化学、機械、自動車、医療機器など、メーカーへの転職は安定を求める求職者に依然として人気です。

しかし、メーカーには特有の「構造的な落とし穴」が存在します。
現場(工場)と管理部門の意識の乖離や、下請け構造によるしわ寄せなど、入社してから「こんなはずじゃなかった」と相談に来られる方が後を絶ちません。

本記事では、メーカー業界で起きがちな3つの法的トラブルと、転職前にそれを見抜くための「弁護士流チェックポイント」を解説します。

メーカー(製造業)の現況

メーカーとは、原材料などを加工して製品を作り、市場に提供して利益を得る「製造業」のことです。

  • ビジネスモデル
    基本は「企画・開発 → 調達・製造 → 販売」の流れで収益を上げます。
    自社工場で生産する形態が一般的ですが、製造を外部委託する「ファブレス」もあります。販売先により、企業向けのBtoB(素材・部品など)と、消費者向けのBtoC(家電・食品など)に大別されます。
  • 特徴
    最大の強みは、技術力で「モノ」に付加価値を生み出せる点です。
    ヒット商品が出れば大きな利益になりますが、一方で工場への設備投資や在庫リスクを抱える側面もあります。近年は製品販売だけでなく、保守などのサービスで稼ぐモデルへ変化する企業も増えています。
  • 雇用市場 
    現在の雇用は、深刻な人手不足による「売り手市場」です。
    企業は人材確保を急ぎ、非正規から正社員への登用や中途採用を拡大しており、正社員数は増加傾向にあります。
    一方、非正規雇用も需要は高く賃上げが進んでいますが、正規との待遇格差は依然課題です。全体として労働市場の流動性は高まっており、企業は正規・非正規問わず、賃上げや柔軟な働き方等の待遇改善を迫られています。

トラブル類型①:サービス残業の常態化(特に生産管理・現場監督)

メーカーで最も相談が多いのが、労働時間に関するトラブルです。特に、工場の稼働に合わせて動く「生産管理」や「現場監督」のポジションで多発しています。

よくある事例

「納期前でラインが止まらないため、深夜まで対応したが、会社側は『管理職扱い』あるいは『みなし残業内』として超過分の残業代を支払わない」

弁護士の解説

ここでのキーワードは**「名ばかり管理職」と「みなし残業の適法性」**です。
工場長やライン長という肩書があっても、出退勤の自由がなく、経営者と一体的な立場にない場合は、法律上の「管理監督者」には当たらず、残業代の支払い義務が生じます。
また、みなし残業(固定残業代)が含まれていても、想定時間を超えた分は別途支払われなければ違法です。

サービス残業トラブルの法的チェック

項目内容
トラブル類型サービス残業の常態化
(特に生産管理・現場監督)
よくある事例・納期前で深夜までライン対応したが残業代が出ない
・会社から「管理職扱い」「みなし残業内」と言われる
会社側の主張「君は『工場長(ライン長)』という役職者だから、残業代は支給対象外だ」
弁護士の解説①「名ばかり管理職」の疑い
肩書があっても「出退勤の自由がない」「経営決定権がない」場合は、法律上の管理監督者とは言えず、残業代請求が可能です。

②「みなし残業」の誤解
固定残業代制でも、想定時間を超えた分の労働には追加の支払い義務があります。
対策タイムカード、業務日報、就業規則を確保し、実労働時間と契約内容のズレを証拠化する。

求人票の「平均残業時間」だけを信じてはいけません。次のような点を面接で質問し、回答を濁す企業は要注意です。

  • 繁忙期と閑散期の業務量の差はどれくらいか?
  • トラブル対応時の緊急呼び出しの有無、頻度は?
  • 生産目標に対して、人員シフトにどの程度の余裕(バッファ)をもっているか?(サービス残業や労働災害の温床となる)

トラブル類型②:知財・競業避止義務の紛争(技術職・エンジニア)

日本のメーカーは技術流出に非常に敏感です。そのため、エンジニアや研究開発職(R&D)の方が転職する際、会社側と揉めるケースが増えています。
入社する際には、就業規則、雇用契約書(雇用条件通知書)の中身をよく確認してください。

よくある事例

「退職時に『退職後2年間は、競合他社へ就職しない』という誓約書へのサインを強要された。転職先が決まっているのに、訴訟をチラつかされて困っている」

弁護士の解説

これを**「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」**と言います。
職業選択の自由は憲法で保障されているため、無制限な義務は無効となる可能性が高いです。
しかし、企業側が強硬な姿勢を見せ、転職活動自体を委縮させてしまうケースが散見されます。

【技術職・R&D】転職時の「競業避止義務」トラブル

項目内容
トラブル類型知財・競業避止義務の紛争
(技術職・エンジニア・研究開発)
よくある事例・「退職後2年間は競合他社へ就職しない」という誓約書へのサインを強要される
・内定が出ているのに「訴える」と脅され、辞められない
会社側の主張「当社の機密情報やノウハウの流出を防ぐため、同業への転職は認められない」
弁護士の解説①「職業選択の自由」が原則優先
憲法で保障された権利であり、会社が個人の転職を無制限に縛ることはできません。

②「無効」になる可能性が高いケース
制限が広範囲すぎる、期間が長すぎる(1年超など)、「代償措置(手当などの金銭補償)」がない場合、その義務は無効と判断される傾向にあります。
対策その場で誓約書にサインせず持ち帰る。「守秘義務(秘密を漏らさない)」と「競業避止(他社に行かない)」を切り分けて交渉する。

【チェックリスト】その誓約書、無効ではありませんか?

  • [ ] 期間は長すぎないか?(一般的に1年以内が目安)
  • [ ] 場所の制限はあるか?(「日本全国」など広すぎないか)
  • [ ] 一番重要: サインする代わりに、十分な退職金や上積み手当(代償措置)は提示されているか?

トラブル類型③:偽装請負・製造派遣の闇

正社員を目指して製造現場に入ったはずが、法的に不安定な立場のまま働かされ続けるケースです。

よくある事例

「『頑張れば正社員になれる』と言われて働いていたが、実態は派遣会社からの派遣であり、指揮命令系統も曖昧。数年働いても雇用の調整弁として扱われ、正社員登用の話が進まない」

弁護士の解説

これは**「偽装請負」**の疑いがあります。実態が派遣であるにもかかわらず、請負契約を装うことで、労働者派遣法に基づく責任(直接雇用の申し込み義務など)を企業が回避しようとする悪質な手口です。

【非正規・派遣】「偽装請負」と正社員登用の罠

項目内容
トラブル類型偽装請負・製造派遣の闇
(いつまでも正社員になれない)
よくある事例・「頑張れば正社員になれる」と言われ続けたが、数年経っても雇用の調整弁扱い。
・形式上は「請負業者の社員」だが、現場ではメーカーの社員から直接指示を受けている。
会社側の本音「直接雇用すると社会保険や解雇規制が重い。都合よく使える外部人材のままでいてほしい」
弁護士の解説①「偽装請負」の判定基準
本来、「請負」であれば、メーカー社員があなたに直接指示(指揮命令)を出すことはできません。直接指示があるなら、それは実態として「派遣」または「直接雇用」です。

②法の抜け穴利用
企業は派遣法に基づく「直接雇用の申込み義務」や「期間制限」を逃れるために、あえて請負を装っている可能性があります。
対策「誰から」「どのような指示」を受けたか、メールや録音、業務日報などで記録を残す。労働局への申告や法的措置の準備材料となります。

💡 知っておくべき法律の武器:労働契約申込みみなし制度

もし「偽装請負」と認定された場合、法律上、メーカー側があなたに対して**「直接雇用の申し込みをした」とみなされる**制度があります。 つまり、あなたが「承諾します」と言えば、メーカーとの間に直接の労働契約が成立してしまう強力なルールです。


【弁護士のアドバイス】トラブルを回避するためのチェックポイント

このようなトラブルに巻き込まれないために、転職活動中(特に内定承諾前)に必ず以下の点を確認してください。

1. 残業の実態を「具体的」に把握する

求人票の「平均残業時間」だけを信じてはいけません。

  • 繁忙期と閑散期の差はどれくらいか?
  • トラブル対応時の緊急呼び出しの頻度は? これらを面接で質問し、回答を濁す企業は要注意です。

2. 雇用契約書の「競業避止義務」を確認する

内定通知書や雇用契約書にサインする前に、条項を隅々まで読んでください。

  • 期間(1年程度が妥当、長すぎないか?)
  • 地域(制限エリアが広すぎないか?)
  • 職種(特定の技術に限定されているか?) これらが包括的すぎる場合(例:「退職後永久に、同業種への転職を禁止する」など)、入社前に修正を求めるか、入社自体を見送る判断が必要です。

3. 工場の稼働状況と人員配置のバランスを見る

工場見学ができる場合、あるいは面接での質問で、**「24時間稼働に対して、人員シフトに余裕があるか」**を確認しましょう。常にギリギリの人数で回している現場は、必然的にサービス残業や労働災害の温床となります。


結論:リスク回避には「代理人」としての転職エージェントを使うべき

弁護士としてアドバイスをしましたが、これら全てのチェックを求職者個人が、しかも面接の場で企業に対して行うのは現実的にハードルが高いでしょう。「うるさい応募者だ」と思われて不採用になるリスクもあります。

だからこそ、法的リスクを回避するためには「転職エージェント」を賢く利用することを推奨します。

転職エージェントを利用するメリット

  • ブラック企業の排除: 大手や優良エージェントは、法的トラブルの多い企業をあらかじめ紹介リストから外しているケースが多いです。
  • 契約内容の確認・交渉: 言いにくい「残業代の実態」や「契約書の条文確認」を、あなたの代わりに企業へ確認・交渉してくれます。
  • 内情の把握: 実際にその企業に転職した人の離職率や、現場のリアルな声を保有しています。

「入ってから弁護士に相談する」のではなく、**「入る前にプロ(エージェント)を使ってリスクを消す」**のが、最も賢い転職活動です。

以下に、メーカー業界に強く、コンプライアンス意識の高い企業案件を多く保有しているエージェントを厳選しました。まずは登録して、企業の「実態」を聞いてみることから始めましょう。

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