「公務員や公社、学校法人の職員になれば、将来安泰だ」 もしあなたがそう考えて転職活動をしているなら、一度立ち止まってこの記事を読んでください。
確かに、官公庁・公社・団体(JA、学校法人など)は、倒産リスクが低く、社会的信用も高い「安定」した職場です。しかし、弁護士である私の視点から見ると、「民間企業とは異なる法律や慣習」が適用される特殊な領域でもあります。
特に、労働基準法の適用除外(一部公務員)や、独特な閉鎖的組織風土は、入庁後に深刻なトラブルを引き起こす火種となりかねません。今回は、この業界特有の法的トラブルと、それを回避するための「転職前のチェックポイント」を解説します。
1. 「逃げ場がない」メンタルヘルス不全のリスク
民間企業であれば、パワハラや過重労働があった場合、労働基準監督署への相談や、柔軟な部署異動が解決策になり得ます。しかし、公務員や一部の団体職員の世界では、事情が異なります。
- 前例踏襲主義のストレス: 「新しいこと」よりも「間違いがないこと」が最優先されるため、非効率な業務でも改善が許されないストレスがあります。
- 閉鎖的な人間関係: 部署異動が硬直的であったり、異動しても組織全体の文化が画一的であるため、「人間関係の逃げ場」がなく、精神的に追い詰められるケースが後を絶ちません。
法的には「安全配慮義務違反」を問える事案であっても、組織の自浄作用が働きにくいのがこの業界の特徴です。
2. 民間とは違う「公務災害」の認定ハードル
業務中にケガをしたり、うつ病になったりした場合、民間企業では「労災(労働者災害補償保険)」が適用されます。しかし、公務員の場合は**「公務災害」**という別の制度が適用されます。
- 認定プロセスの複雑さ: 公務災害の認定は、民間労災に比べて手続きが複雑で、認定までに非常に長い時間を要することがあります。
- 組織の協力姿勢: 認定申請には所属組織の協力が不可欠ですが、「組織の不名誉」を恐れて申請に消極的な対応をされる(いわゆる「公務災害隠し」)トラブルも散見されます。
「公務員だから守られている」と思い込むのは危険です。制度の挟間で苦しむリスクがあることを知っておく必要があります。
3. 「会計年度任用職員」など非正規雇用の雇い止め
近年、行政機関や独立行政法人で急増しているトラブルが、有期雇用職員(会計年度任用職員など)の**「雇い止め」**です。
- 3年・5年の壁: 民間企業では、通算5年を超えると無期転換(正社員化のようなもの)の権利が発生しますが(労働契約法18条)、公務員の多くにはこのルールが適用されません(または別の任用規定が優先されます)。
- 更新上限: 「公募によらない再採用は2回まで(計3年)」といった独自の運用ルールが設けられていることが多く、「長く真面目に働けば正職員になれる」という期待が裏切られる法的トラブルが頻発しています。
弁護士のアドバイス:転職で失敗しないための回避法
これらのリスクを避け、本当に「安定」した働き方を手に入れるためには、求人票を見るだけでは不十分です。以下のポイントを必ず確認してください。
① 正規・非正規の待遇と「出口戦略」の確認
特に契約職員や臨時職員として入職する場合、その契約が労働契約法の「無期転換ルール」の適用内なのか、公務員法制下の任用なのかを明確に区別する必要があります。また、就業規則(または条例・規則)における更新上限の有無を事前に確認しましょう。
② 「休職者数」等の公開データを探す
組織の風通しを客観的に測る指標として、「職員数に対する病気休職者の割合」が有効です。自治体や大きな団体であれば、職員の福利厚生に関する白書や議会資料などでデータが公開されている場合があります。平均よりも著しく高い場合は、組織風土に問題がある可能性が高いです。
③ 内部事情に詳しい第三者(エージェント)を活用する
これが最も現実的かつ効果的なリスク回避法です。 閉鎖的な組織であればあるほど、外部から「本当の残業時間」や「部署ごとの雰囲気」を知ることは不可能です。
しかし、その業界に特化した転職エージェントであれば、**「過去にその組織に転職した人からのフィードバック」や「離職率の推移」**などの内部データを持っています。
**「ここは離職者が多いのでやめたほうがいい」「この学校法人は労務管理がしっかりしている」**といった、求人票には載らないリーガルリスクに関わる情報を引き出せるのが、エージェントを利用する最大のメリットです。



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