「ちょっとバンパーを擦っただけで、修理代10万円を給料から引かれた」 「売り上げが規定に届かず、歩合率を下げられて手取りが生活保護レベルに…」
タクシーやバスの運転手として働く皆さん。事故のリスクと隣り合わせの毎日の中で、「何かあったら全部自腹」という恐怖に震えていませんか?
弁護士として断言します。会社の車両の修理代を、従業員に全額負担させる契約は、労働基準法違反の可能性が極めて高いです。
会社は「プロなんだから当然」と言いますが、それは利益を独占するための詭弁に過ぎません。今回は、旅客運送業界にはびこる「事故賠償の闇」と、安全な労働環境を手に入れるための会社選びを解説します。
タクシー・バス運転手
危険信号:「累進歩合制と事故賠償金」
この業界で最も多い相談が、事故や売上ノルマにまつわる「金銭的なペナルティ」です。
ここが危ない!法的リスク
- 「事故賠償金」の全額自己負担は違法: 労働基準法第16条では、あらかじめ違約金や損害賠償額を決めておくこと(賠償予定)を禁止しています。 また、実際に事故が起きた場合でも、従業員に過失(ミス)があったとしても、会社が修理代の全額を従業員に請求することは、判例上ほとんど認められません。 「利益は会社のもの、リスクは運転手のもの」という理屈は法的に通りません。せいぜい、無事故手当のカット程度が許容範囲であり、修理費の直接請求は「報償責任の法理」に反します。
- 恐怖の「足切り(あしきり)」と累進歩合: 一定の売上に達しないと歩合率が極端に下がる「足切り」制度。これ自体は直ちに違法ではありませんが、このノルマを達成するために休憩を取らずに走ったり、危険な運転を誘発したりする温床になっています。 また、ノルマ未達の結果、給与が「最低賃金」を割り込めば、それは明確な法律違反です。
- ライドシェア解禁による雇用不安: 今後、ライドシェア(一般ドライバーによる送迎)が拡大することで、正規のタクシー運転手の待遇が悪化する懸念があります。会社が守ってくれるのか、使い捨てにするのか、今まさに見極めが必要です。
弁護士のアドバイス:安心してハンドルを握れる会社の条件
「事故ったら人生終わり」のようなプレッシャーの中で、良い接客や安全運転はできません。転職時は以下のポイントを必ず確認してください。
① 就業規則の「損害賠償」条項を見る
面接で「万が一事故を起こした場合、ドライバーの負担はどうなりますか?」と聞いてください。 ホワイトな会社は**「任意保険に加入しており、免責額(例えば最大2万円など)までが負担です」「修理代は会社持ちですが、無事故手当がつかなくなります」**と明確なルールがあります。 「その時の状況によるかな(=全額請求の可能性あり)」と濁す会社は危険です。
② 「固定給」の比率が高い会社を選ぶ
完全歩合制(フルコミッション)は稼げる反面、病気や事故で休んだ瞬間に生活が破綻します。 バス会社であれば「固定給+距離手当」、タクシーであれば「固定給部分が最低賃金を大きく上回っているか」を確認しましょう。生活の安定こそが安全運転の源です。
③ 業界特化のエージェントで「事故対応」の実績を聞く
求人票には「保険完備」としか書かれていません。 しかし、タクシー・バス専門のエージェントであれば、 「この会社はドラレコなどの安全装備にお金をかけており、事故率が低い」 「過去に事故費用を不当に請求して労基署に入られた会社だ」 といった、命と財布に関わる裏情報を持っています。
リスクを一人で背負わないために、組織として守ってくれる会社を選んでください。



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